筆を立てるとは、勁力?!
「筆を立てる」、よく使われる言葉ですが、筆の軸(持つ部分)を紙に垂直にするということではありません。軸ではなく、毛を紙に突き立てることをいいます。その時、筆の毛の部分はSの字のような形状になります。
筆の毛先が紙の繊維にぐっと突き刺さり、毛先で紙をわしづかみにするような感覚と、突いたことで垂直方向に力がみなぎり、机の下から押し上げてくる圧を感じます。その状態が「筆が立っている」という状態です。
生徒さんに太極拳の先生がいらっしゃるのですが、この下からの圧を説明するのに、恐れ多くもこんなふうに説明しました。
自然と膝を軽く曲げて立って、膝の屈伸をして身体を上下に揺らすと、床から反発してくる圧を感じるじゃないですか、そういう感じです、それを筆でやってみてほしいんです、と。
そしたら「それ、太極拳でいうところの勁力(けいりょく)ですね!みんなそれを会得しようと学ぶんですよ」と。
「ん?なになに?勁力???」
私はそんな言葉、もちろん初耳で、さっそく勁力ってなんだ?とネットで調べました。
いろんな方の意見がありましたが、この生徒さんの言わんとするところと、私の感覚とどちらも合点がいった説としては、大地から受ける縦の力のことで、それを徐々に下から上へ伝えていき、それによって動きだす、つまり体の内側から動き出すエネルギー、これを使って動くというのです。
びっくりしました、すごい、筆遣いもそんな感じなんです。
同じ物理法則なのでしょう。
筆を立てることで、毛束の内側にこもった力が、筆を動かし始める時の瞬発力となり、線が活き活きとしてきます。
紙に対して筆を平行に動かすことで、筆画になっていくわけですが、筆が立っていると、紙面に対して垂直方向(縦)の力を引っさげながら、平行(横)に進むことになるため、ただ紙上を滑っていくのではなく、筆先が紙の繊維を確認しながら進むといった具合になります。
こういう感覚を研ぎ澄ませて書いていると、いつの間にか、どこまでが指で、どこから筆なのか、毛先の感覚が指先に直結しているかのような、手から筆が触れている紙面までが一体化してくるような感じになるのです。
太極拳の世界でいうと、身体が大地と一体化するということになるのだろうか?!
ワレモコウ
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