造形センスを探る 心法ここがポイント!
四字で一句、全部で250句からなる千字文。
約三分の一ほどUPしてきましたが、懐素が『草書千字文』において、どのように字を造形しているのか、感じたことをこの段階で一度まとめてみようと思います。
臨書の流れを説明しますと、
書き始める前に四文字をじっくり観察し、その特徴を言葉にできる部分は書き留めます。へんとつくりの広さはどうか、へんとつくりの配置のズレはどうか、字の中の空間の疎密はどうか、字の傾きはどうか、字の重心はどこか、字の大小のバランスはどうか、などです。
言葉にできない部分とは、その字の印象、パッと見て初めに感じた感想を心にとめておきます。かわいらしいとか、へんてこな形だとか、すかっとしているとか、しっとりしている、などです。
そういう事前のお見合いを済ませた後、ようやく書き始めますが、なかなか全く同じように書けない、そこと向き合うことが、自分と懐素とのすり合わせになるので、そこにはたっぷり時間をかけます。
そうして一枚の半紙臨書を完成させています。
大きさもすべて手本と全く同じにすると、なかなかうまく半紙におさめらないという事態が起こってきます。限りなく造形を変えずに、一枚におさめるべく字と字のバランスをとっていく。これが難しくも、とても面白いです。
そうやって四文字を半紙におさめるだけで、創作作品のような見栄えのある世界が出来上がる、懐素の造形センスには、感嘆の連続です。それだけひとつひとつの字の造形が魅力的だということでしょう。
下記、これまでの臨書で感じたことです。
<懐素の造形センス>
① 字の疎密が絶妙。へんとつくりは基本的に広々としているが、そんな単純な空間処理では終わらない。どこかの空間を潰して密な部分を作り、普通では余白にしない部分で白を残すことで、疎密のコントラストがさえわたる。
② 字毎に傾きが変わる(左傾・右傾)だけでなく、一文字の中で傾きの変化を作る。至るところで傾きが自由自在に変化するものの、時系列で続けて書いた四文字故に、前後呼応しており、いきいきとしたリズムとなっている。
③ 運筆の緩急。ゆったりと書き進めながらも、時折空間をスパッと切るように働く筆画が現れる。というより、懐素の草書はかなり直線を意識したほうが書きやすい。一見、柔らかな曲線のように見える線でも、直線のつながりという感覚で運筆するとしっくりくる。
少し懐素に近づけていたらうれしいなぁ。。。
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