どうしたら書けるか探る 心法ここがポイント!
以前「書きやすさと書きにくさ」についてふれたが、書きにくいところが自分にない要素なので、そこは徹底的に向き合うことが大切。
「化被」の「被」の二画目の横線部分、最初すぱっと直線に引けなかったところ。
懐素は基本的にゆっくり筆を進めていると思われるが、この1画目から2画目にかけての筆画は非常に鋭くスピード感に溢れている。
空中の動きを考えてみると、一画目の点から次へ向かうとき、筆の弾力に任せて持ち上げ、ブルーの線のようにゆったりと筆を移動させる場合、遠心力が働きそれに素直に従うと二画目の右上がりは自然とブルーの線のように反りあがる。最初悩まされたのがこれだ。
しかし、懐素は全く反りやたわみがない。つまり、遠心力を一旦制御して切り替えているか、あるいは限りなく遠心力が働かないようオレンジの線のように最短の動きをしているか、であろう。
他の部分での筆運びから考えるに、後者、つまりオレンジの導線ではないかと思う。
彼はひらひらと華やかさを加えながら字を完成させようとしない。無駄な装飾を嫌うのかとも思うが、変化に富んだ字もありただシンプルな造形におさめようとしているとも思えない。
確かに書全体から放たれり枯れ感は、進行方向とは逆に戻るような動きが少ない省エネ的な筆づかいからかもしれない。
しかし、この2画目のように時折見せる瞬発力とでもいおうか、惰性を一喝するかのような鋭いエネルギーのほとばしりは、字に躍動感が生まれる。書きにくい部分に向き合い、自分なりに理解して書き込むと、急に懐素が近くにいるかのような感覚を覚える。
0コメント